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決算短信を読んでいるだけで面白いソフトバンクG
ソフトバンクグループといえば、
王貞治と孫正義の二大巨頭による
日本経済を牽引する企業でありますが、
ソフトバンクって結構インドにも
投資しているわけですよ。
例えば、
・Ola -配車サービス
・PayTM -決済サービス
・OYO -Hotel関連ビジネス
そうなんですよ、
なので何の気無しに決算短信を見ていたら、
その面白い事、すごいの何の!
なんだろう、商社の決算短信って
読んでて全然ワクワクしないんですよ。
例えば、決算短信にはセグメント毎の
開示内容があるわけですが、
商社の場合は、
「石炭価格の下落を背景とした減損の反動で、〜」
とかそんな知らんわ!という感じですが、
ソフトバンクGの2017年度通期の決算短信とか、
「ソフトバンク・ビジョン・ファンドの株式評価益3,460億円が〜」
とかいきなり出てきたりして、
そもそもソフトバンク・ビジョン・ファンドって
名前ちょっとカッチョよすぎだし、
3,460億円の評価益とか、おいおい大丈夫なのか、
とか思っちゃうくらいでかい金額だし、
とりあえずこの決算資料に
ぐいぐい興味を引き込まれていく感が半端ないです笑
でね、その後見てても、結構面白いんですよ。
経理やってていいなぁと思うのは
この資料の背後が分かることでしょうかね?
といわけで、
ソフトバンクの2017年度の決算短信を
ちょこっとだけ説明したいなぁと思います。
まぁ今更なんですけどね笑
それではお手元にご用意を。
いざ、決算短信の内容へ!
ソフトバンクGはIFRS会計基準
ソフトバンクの適用している会計基準は
決算短信の1ページ目の一番上に記載あります。
平成30年3月期 決算短信[IFRS](連結)
とあります。
というわけで、ソフトバンクってIFRSを使っているわけです。
IFRSは International Financial Reporting Standards
の略となるわけですが、
internationalとかついているくらいなので、
全世界で使われることを目的としており、
世界からお金を引張ってこないといけないような会社は
投資家から見た時に他の案件と比較できるように、
国際的な会計基準で報告する必要性があります。
IFRSは、うちの社内にはあまり良い基準ではない、
という声もちらほら聞きますが、
公正価値や実態
で取引を記帳しないといけないよねー、
というのが、基本的なコンセプト。
もちろん他の会計基準が公正価値や実態を
表していない、というわけではないのですが、
IFRSはよりその傾向が強い、ということです。
ソフトバンクのFY2017の業績は?
このIFRSです!と宣言している
すぐ下にソフトバンクの実績の記載があります。
FY2016との比較の記載がありますが、
FY2017は
・売上 9.1兆
・営業利益 1.3兆
・親会社の所有者に帰属する当期利益 1.0兆
となってます。
でけー会社笑
三菱商事が1兆円を目指すとか言ってますが、
ソフトバンクはすでにそんなのは達成済みと。
経営成績などの概況
で、本題のとても楽しいところなのだけれど、
それは3ページから始まる
経営成績などの概況
というところ。
ここで上で紹介した
FY2017の決算の状況を詳細に説明しているわけです。
で、ここが面白い。
というか、イベントがいっぱいあったり、
出てくる人たちが大物かついろいろな国に
跨っていたりですごく興味深い!
まさに大乱闘スマッシュブラザーズって感じですよね、これ。
で、以下では特に経理屋として、
面白いなと擽られた項目を
説明したいと思います!
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(c)ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドからの営業利益 _4ページ
これね。
まず、営業利益の1.3兆を説明するのに、
既存の事業とカッチョいいファンドの事業を
分けているんですよね。
まずこの分け方が渋い。
このファンドはFY2017の組成ではあるようだけれども、
金額も大きいから投資家の目を騙すことにならないように
みたいな配慮もありつつ、
ここは今後も大きくなるだろうし期待の意味も込めて、
という親心も見えてエモい分類。
そして、出てきた
「主にSBFが保有するNVIDIA株式(FVTPL金融資産)の株価上昇に伴う公正価値の増加」
という謎のワードたち。
なかなかFVTPLって普通の事業会社では見ないです!ので、1エモ短信ポイント。
FVTPL(=Fair Value Through PL)金融資産とはなんぞや。
FVTPLはこの略語が示すように、
Fair Value(公正価値)の変動を
PL(損益)を通して認識しましょう!
というもの。
このFVTPLと対になるのがFVTOCIという概念。
こちらはFair Value Through Other Comprehensive Income
という略称。
Fair Valueを包括損益で認識しましょうという内容。
包括損益についてはまた別の機会に。
これはその保有している金融資産の種類によって、
1、FVTPL
2、FVTOCI
に分類されるが、本件に於いては
ファンドという性質上、
このNVIDIAの公正価値の変動はファンドの本業に等しいため、
FVTPLなんだ、という整理なんだと思います。(43ページに記載あり)
ちなみに商社が持つ投資はだいたいFVTOCIです。
あと、ちなみに株式を多く持ってりして、
持分法適用会社/連結子会社になっている場合は、
これらとは違う分類になります。
NVIDIA株式、、、これちょっとキナ臭いのか?
ちなみにこのNVIDIAという会社は
NASDAQに上場しているよう。
ソフトバンクの持ち分で3,460億も評価益出るって、
これやっぱヤバイボラティリティですよね笑
いくら突っ込んでいるのかなぁ。。
と見ると、26ページに記載が。
投資額的には、
全体で2.8兆円のFVTPL投資を持っていて、
うち、1.4兆がUberとDiDiなので、
1.4兆が評価後の
NVIDIAの投資簿価なんでしょうな。
元々1兆が0.4兆上がって、
というのであれば有りえない話ではないか。
これ26ページには
NIVDIA株式をSVFへの移管に伴い"投資有価証券"から振替ました、
と記載ありますが、
これはソフトバンク本体の有価証券として認識していたものが、
ビジョンファンドへ移行したということみたいですね。
移管はおそらく時価でされているのでしょう。
まぁちょっとFVTPLから目を動かして、次の情報へ。
(f)持分法による投資損益 _5ページ
持分法に関して、
興味を非常にそそられるのはこの、
なお書きより、下の部分。
たぶんアリババって法定決算は
US基準で実施していて、
それをソフトバンク側で一回IFRSになおし、
連結決算がなされているのだと思いますが、
Alibaba Picturesという子会社があって、
[米基準]
では連結区分変更の際に、
評価益が出たけど、今回減損したから
取り込みが減りまーすなんだけど、
[IFRS]
では、そもそも連結区分が変わらず、
今回減損する必要もなかった、、、
ということなんでしょうね。
ていうか、アリババってUS基準なのか?ここ。
中国企業だから決算期は1-12月で、
ソフトバンクとは合わないって、
最下部に記載あるね。
アリババ単体はChina-GAAP
アリババ連結はUS-GAAPなんでしょうか。
(i) デリバティブ関連損益_6ページ
アリババ株式先渡売買契約に含まれる
決算短信より
カラー取引に関するデリバティブ関連損失を
604,156百万計上しました。
もう何を言っているのか不明笑
取引も金額も桁が破格すぎて、よくわからない。
が、下記にて仕訳を考えてみたいと思う。
(一応60ページに記載ありますので、そちらもご参照。)
これ取引としてはシンプルに考えることはできて、
アリババの株を使って金を早く欲しい、ということ。
ソフトバンクGは客から54億ドルもらい、
アリババをもらうentityはその将来のアリババ株を元手に
金融商品を作成し66億ドルを手にする、というスキームのよう。
この12億ドルの差額がソフトバンクGが
認識するTotalの損失になる。
基本的にはこの12億ドルは
利息とアリババ株のput optionという要素が
強いんだろうなと思う。
FY2016の会計仕訳
どうやら2016年6月に入金しているようで、
その際は
DR CASH 5,784億
DR デリバティブ資産 955億・・①
CR 株式先渡売買契約負債 6,739億・・②
という仕訳が入り、
①は時価評価、②は償却原価で測定。
おそらくだが計算上②が66億ドルの金額を
その時点の時価を使用して、
現在価値に割引く形で計算され先に算出。
その後、実際の入金額との差額が①として認識。
この①はこのスキームを運営するためのコスト
ということになるのだと推測。
FY2017以降の会計仕訳
そして、本件は②で計上される負債が、
2019年の実際の株式譲渡のタイミングをめがけて、
DR 支払利息
CR 株式先渡売買契約負債 ・・②'
を計上していき、
最終的には②+②'の残高が7,200億円(=66億ドル相当)
まで積上がる。
しかしながらこの②+②'の最終的な残高は
2016年6月時点のアリババの株式価格を
元に算定されている一方、
期末のタイミングでの②の本来的な負債は
株数×株価=負債総額
となるはずだから、
期末のアリババの時価と2016/6の差は
①のデリバティブとして評価することで表現。
アリババ株の株価が期末に上がっていれば、
金額的に大きな株を渡さないといけないので、
DR デリバティブ損失
CR デリバティブ負債・・③
を計上することになる。
で、こうなると
②+②'+③が期末時点のアリババの時価と一致する。
FY2019のアリババ株譲渡時(株価上昇局面)
一方、最後譲渡する段階において、
アリババ株が何株必要か上限/下限の中で
その時点での株価に応じて決定する。
で、この際に元となる負債の総額は
当初握った66億ドルだから株価が動けば、
株数が変動することになる。
(=②+②’の株式先渡売買契約と
同金額のアリババ株がオフセットされる)ということで、
Totalで見ると損が膨らみはせず、
計上していてデリ負債は全て取り崩される。
多分オプションの典型的な効果でしょうかね。
DR 株式先渡売買契約負債
DR デリバティブ負債
CR アリババ時価(アリババ株簿価+売却益)
CR デリバティブ損失の戻り
この会計処理の不思議な点
やはりこの会計処理の不思議な点は
最初の負債側の償却原価で計上する点。
これ公正価値で行ければオプション取引に関して
巨額の損を計上するなんとことはしなくて
いいのになぁと思う次第。
細かいとこまではさすがに見えてこない。。
中に入りたい。。
まだPLで消耗しているの?~巨額の公正価値
上記に取り上げた中だけで、
・ソフトバンク・ビジョン・ファンドの評価で+3,500億
・アリババの借入で△6,000億
この振れ幅が公正価値のえぐみなんじゃないかなと勝手に思慮。
こうなると本当PLじゃなくてCFが大事ですよね。
PL学園は怪物すぎて判断できない笑
というわけで、
非常に勉強になる決算短信です笑
他の年も見てみよう。
こんなに会計情報を開示してくれる
会社ってそうはないんじゃないのかな??
そしてこれに加え、
Softbankではソフトバンク・ビジョン・ファンド
の会計処理についての補足資料も作っていて、
これがまた非常に面白いのでそれはまた次回。
うーん、久しぶりに頭使った笑
ソフトバンクは改めて通信の会社じゃない笑
あ、あと上記の処理は全て
私の想像ですのでおかしな点あれば
ご指摘くださいませ。
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