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【総合商社】住友商事FY2018は3,205億円で着地!

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前年比+3.9%の3,205億の当期利益

これで総合商社のFY2018の決算短信読み込みも6社目。
並べて比べてみると各社の違い、各社の共通点が見えてきますね!
それでは決算短信を片手にどうぞ。

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/ir/report


収益 5.3兆 前年4.8兆
売総 9,232億円 前年9,565億円
当期利益 3,205億 前年3,085億円

収益はIFRS15号適用の影響もあり0.3兆円増加
売総は事業再編の影響により333億円の減少
当期利益は120億円の増益でした!

PLのTopic

IFRS15号により微増の収益

IFRS適用による収益の変更に関しては
三菱・三井・伊藤忠ほど大きな影響は出ていませんが、
短信に+0.3兆円程度の影響がある旨、記載あります。

また、住商のIFRS15号に関する開示で他と異なるのは、
累積の影響額での調整が67億円の調整があったと、いうことです。

この調整はIFRS15号が過去から適用されていたと
仮定すると発生する修正金額ですが、
他の商社はあまりこの影響額については言及していませんでした。

また、ちょっと詳しく見ると
今回の調整は利益剰余金と持分法投資の修正を実施している、とのこと。
つまり持分法投資先の過去の利益に影響があり

期首に(借方)投資持分調整67億(貸方)利益剰余金67億
という仕訳が入り、会計基準の適用による影響を反映させています。

前年比、300億円減少した売総/840億改善した経費

△333億 9,565→9,232

各商社、増益の決算となっていますが、
売総も住友商事以外は増益となっています。

決算のセグメント情報見てみると
インフラと金属ではそれぞれ329億円、192億円の増益ですが、
輸送機・建機セグメントでは△1,220億円の減益です。

インフラはEPC案件の高進捗によるものとのこと。
これは工事進行基準という会計基準に基づきます。

工事進行基準は、
例えば工事の全体の工程が100あった時に70まで完成していれば、
全体で認識する見積利益の70%を計上する、というものです。
今年、昨年度より利益が出ているということはこの進捗度合いが進んでいる、ということです。
まぁでもこの会計基準は見積もりが非常に重要になることから、
多かれ少なかれ、鉛筆ナメナメの世界ではあると思います。

輸送機・建機セグメントのマイナスは△1,220億円で、
米国のタイヤ事業の再編と記載されていますが、
連結対象会社→持分法適用会社
になったからだと推測されます。

下記の記事を読むとタイヤ事業の関連会社への出資が、
100%→50%へと減少しています。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-04/P20R876JTSEA01

昨年度の短信も参考になります。

https://www.sumitomocorp.com/-/media/Files/hq/ir/report/summary/2017/20180508_01.pdf?la=ja

連結対象会社だと収益・売総・経費・・・と
各損益のラインで取り込みが発生しますが、
持分法適用会社であれば各ラインでの取り込みではなく、
PLの持分法投資からの投資一本にて認識されます。

これは逆も言えて、伊藤忠の売総が大きく変動した要因は、
ユニー・ファミマ/ヤナセの連結子会社化による
各損益ラインでの取り込みが増加したためです。


また、持分法投資化が与える売総の減少と同様に、
このビジネスでの経費の住友商事へのインパクトも減少しており、
経費は前年比で11%も改善しています。

かなり大きな事業再編だったことが見て取れます。

一過性利益の反動で大幅減の金融収益

△299億 326億→27億

こちらは前年にIPOによる再評価益とポケットカードの売却益があった反動で、
前年比でマイナスとなっていますが、
昨年度の利益はあくまで一過性のものなのであまり気にする必要はありません。

ただ、ちょっと気になるのはIPOによる評価益。
こちらはどういう処理が入っているのでしょうかね。
基本的に資本関係のある取引であれば資本剰余金での取引となり、
PLにはヒットしないBSだけの取引となるはずですが、
PL認識しているということは連結区分の変更があったということでしょうか。

BSのTopic

米国タイヤ事業に関連する資産減少

PL項目でも大きく影響していますが、
BS項目でも大きな影響が出ており、
昨年度比で売却目的保有資産及びその資産に関する負債が大きく減少しており、
それぞれ△1,916億円、△653億円減少しています。

ただ、円安の影響で総資産自体は増えているようです。

IFRS15号適用による勘定科目の組み替え

これは大きな話ではないですが、
IFRS15号の適用により負債に関する勘定科目が
前受金から契約負債へと変更されています。

会計基準の変更はこういうところにも影響が出るわけです。

終わりに

今年度の住商の決算はタイヤ事業の再編により
PL/BSともに大きくインパクトが出ています。

そのような大きなうねりがある中で、
全体としては前年度比増加の3,205億円での着地としているあたり、
商社の損益作りの底堅さは流石だなぁと思うわけです。

ちなみに商社の実績を鳥瞰してみると、
今年は各商社で1,000億円ずつの差がありました。
三菱6,000
伊藤忠5,000
三井4,000
住商3,000
丸紅2,000
豊通1,000
双日700


この差は今後どうなっていきますでしょうかね??
どの商社がテクノロジーの勝ち馬に乗れるか?がその肝となるのは間違い無いでしょう。

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