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総合商社は新たなこりん星を探さねばならないフェーズに直面している・・・

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こりん星

こりん星

小倉のゆうこりんを輩出したエリート惑星。
ゆうこりんは、イチゴの馬車に乗ってスタジオに登場し、
収録が終わればさっとこりん星に帰っていく。
そんな銀河系最後の惑星、こりん星。

もちろん、大人なら信じるものは誰もいない。
まぁ当時まだ彼女が出た当初、中学生くらいだった私は、
もしかしたらそんな楽園もあるのではないか?
若干騙されそうになったが。

そういえば、騙されそうという話で言えば、
保険を売っている高校の先輩が最近350万円の絵を買わされたそう。
有名な画家の絵というわけではなく、
「成功した後」の自身の肖像画を描いているという、
無名の画家に絵を描いてもらったらしい。
現在月10万円支払っているそうだが、
まだ納品はされていないとのこと。
いろいろ突っ込みどころはあるが、詐欺でないことを祈りたい。

ところで、こりん星、
という星はとてもコンセプチュアルで、
とても魅力的な星であった。

もちろんこんな尖ったことをやれば、反感が出るのは当然で、
全ての人にとって魅力的だったわけではないが、
小倉優子の商業的な成功を見れば、
こりん星は成功だったと言っていいと思う。

こりん星が成功した理由は、
やはり小倉優子の圧倒的な可愛さにあったと思う。
少なくとも私は好きだった。

好き

こりん星から来た、
という話をおかずクラブがしたとしても
多分ブレイクには繋がらない、と個人的にはおもう。
(たとえ、彼女たちから他の惑星のニュアンスを感じていたとしても。)

そして何より、やはり小倉優子は頭が良かった。

ある日、こりん星を手放した。

こりん星は港区にあると公言した。
スタジオにはエスティマで通っていると公言した。

http://news.livedoor.com/article/detail/5942965/

その自己否定でまた売れた。

誰かの入れ知恵はあったのだろうが、
この方針転換を見事に成功させ、
さらに最近はママタレとしても活躍しているようだ。

小倉優子は頭がいい。

https://www.fnn.jp/posts/00388370HDK

田端大学の定例課題・・

さて、田端大学の今月の課題図書は「大本営参謀の情報戦記」という本です。

[amazon asin="4167274027" kw="情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫)"]

田端さんが帯を書かれていました。

簡単に紹介すれば戦時中に情報参謀として戦争に参加した筆者の体験に基づく、
情報や戦略に関する考察、教訓が書かれた本です。

田端さんの気に入っている一節は、
ニューギニアの戦場を見た日本軍は地形を表面的に見て「」と捉えたことに対し、
米軍はジャングルの広がる地形を見て「」と捉え、陸路ではなく、
制空権の獲得こそが戦争を優位に進める上で最も大事なこと、
と判断した点だそう。

さてさて、

今回の課題は、

・自分がいるビジネスの戦場をどう捉えるか?
・その戦場はどのように変化していくか?
・自分がいるビジネス環境のKey Factor for Successは何か?
・自社の最大の競合会社を選び、上記KFSを用い、有利に進めるにはどうするか?

要は田端さんの好きな一節にあるように、
業界の制空権とはなんだ?それはどうなるんだ?
ということを問われているわけです。

商社の制空権

私は俗に言う総合商社に勤めているので、

総合商社という業界で勝つために何が求められるのか?
何が制空権なのか?というのを考えたいと思います。

総合商社にとって最も大事なものは?

総合商社がビジネスを遂行する上で最も大事なものは
抽象的ですが会社全体のブランド価値です。
それは、例えば、「三菱商事さんだから大丈夫だろう。」といったような信頼感
捉えるとわかりやすいでしょうか。

メーカーやITの会社であれば技術力が制空権にあたるのでしょうが、
資産を持ち合わせない商社は会社のブランド価値で勝負せざるをえないわけです。

そして、そのブランド価値は一体どのように形作られるか?

ブランド価値を支えるものこそが、米軍にとっての制空権であり、
総合商社が総合商社たる所以となるものです。

会社のブランド価値とは?

さて、会社のブランド価値とは?

という壮大な問題となると、すでにいろいろな研究がされていると思いますが、
先ほどの例のように、単純に世間からどのように思われているか?
という意味で使っています。

現代における商社のブランドを維持する上で
問題を難しくしているのは、過去と比較して、
ケアしなくてはいけない世間の範囲が大きく変化している、ということです。

特に今の社会では株主や潜在的な株主だけでなく、
一般消費者に対しても目を配らないといけません。
レピュテーションリスクというやつです。
月並みなコメントではありますが、インターネットによって、
その変化は急激に起きている、と思います。

そして、それに応じるように、
商社のブランド価値向上を支えるものも変化せざるをえないわけです。

このブランド価値向上を支えるものの変化、
つまり小倉優子でいうところのこりん星の爆破に対応することが
業界での覇権を取るにあたり、今後のKeyになるのかな、
と推測できるわけです。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/160207/2

総合商社のブランド価値を支えるもの

さてさて、話を総合商社の現状に戻しまして。

現在の総合商社のブランド価値は
下記のようなピラミッドで形成されていると思います。

商社にとってのKFSは何と言ってもPL創出力です。

総合商社は2019年現在、
当期純利益(=PL)という会計上の項目で語れることが多いです。
なので、界隈ではPL学園と揶揄されます。

総合商社は過去からそのビジネス形態を
大きく変えて発展してきている、といわれています。
が、それはビジネス形態がトレード中心から事業投資に変わっている、
というもので、PLを重視するという観点は変わっていません

なぜなら、各商社は株主の期待に沿うべく、
株価を上げる・維持するべく、
ビジネスに邁進し、PLを創出し続ける必要があるからです。

そして各商社はピラミッドの一番上のレイヤー
差別化しようと日々知恵を絞っています。

例えば、
もともと過去から資源を扱う三井や三菱は「資源」の取引によって、
PLを生み出し、ブランド価値を高め、

資源がPLを生み出す力

伊藤忠であれば、祖業の繊維のイメージから連想される「非資源」「中国」
いったようなキャラ付けでビジネスを伸ばし、
PLを生み出し、ブランド価値を上るといった具合です。

伊藤忠のPLを生み出す力

下記が2017年度と2018年度の決算のまとめです。

中身を見ていくと上記のように、
「非資源」「中国」といったキーワードを使いながらも資源の分野でも利益を生み出し、
会社全体のPLを増幅させている
伊藤忠はPL学園全盛時代に最も力を伸ばしてた総合商社
と言えるのではないでしょうか?

ただ、ここで誤解してはいけないのは、
「非資源」「中国」とかそういうキャラを作ればいいわけではなくて、
言行を一致させる実力があってこそ、ということなのです。
言うは易しです。

ゆうこりんに関しても同じです。
こりん星というコンセプトだけでは流行らない。
それを実行できる可愛さが必要条件なんです。

実力持ち

変革を求められる総合商社

PL学園の崩壊

ただ、KFSにPLを置くブランド価値創造ピラミッドは
遅かれ早かれ崩壊すると思います
PLに対する周囲の認識が変わってきている、ということです。

先ほどの2017決算と2018年決算に関して、
伊藤忠は前年比+1,000億円。
5年前の2013年の当期利益は2,800億なので+2,200億円。

普通に考えてこの好況がいつまでも続くと思えますか?

単純にそれは無理だと思います。
急激な成長はどこかに歪みを生みますし、
血反吐を吐きながら行うマラソンは破滅しかもたらさない、
というのが個人(とメトロン星人)的な見解です。

出典 愛媛県歴史文化博物館

事実、PLを追求すると、いろいろなところに問題が出るわけです。

東芝で起こった不正会計
不正に手を染めてしまうのは論外ですが、
会計上の利益を生み出す、
合法的な方法なんていうのはいくらでもあります。

例を挙げて言えば、
・関連会社の持分法投資利益
・投資先の公正価値評価
などです。

例えば、投資の本来の目的といえば、他者にお金を突っ込み、
それ以上のリターンを得る、という点にありますが、

例えば、年間20億利益を出す会社に、
100億円投資して株式の20%を購入した場合、
その会社から配当がなければ、
PL上は4億円の利益が上がるのに、お金は一銭も回収できていないわけです。

CFとPLにまつわる悲しい話

これって株主から見たら、何やっているんだ?という感じですよね?

こういったように、
もちろんPLは参考にはなりますが、
業績を図る尺度としてのPLの価値は
情報の利用者の成熟度に反比例して低下するはず、と思っています。

そうすると、
ブランド価値を構築するためにPLを追求していた商社が、
将来的にPLを追求するメリットは薄くなるはずです。

小倉優子が視聴者の飽きを感じ取り、
こりん星を手放したことと同じように
各社はPLを業績を図る尺度から捨てる
という行動を今後取るはずです。


、、、とは言いながら、
現在の総合商社の強いところは、
PLを作ろうと思えば、作れてしまう資金力・実力・行動力にあるわけです。

ここの力は侮れないですよね。さすが総合商社だと思います。

総合商社にとっての新たなこりん星

上記のように遅かれ早かれ、
総合商社は当期利益(=PL)に変わる新たな尺度を
最も価値のある尺度として使用すると私は思います。

繰り返しになりますが、それは
・利用者の成熟によりPLの価値が下がる
・無理にPLを獲得しに行くような取引は疲弊しかうまないから避けたい
という、外部・内部の双方からの要請によるものです。

結論から言えば、遅かれ早かれ、
当期にお金をいくら生み出したか?という「キャッシュフロー」が、
最重要項目に躍り出る時期が来るはず、と思っています。
キャッシュフローを獲得する力こそがKFSとなります。

なぜならキャッシュは嘘をつかないから。

KFSのチェンジ

もちろん今でも重要項目として各社から対外公表されているのですが、
上述のように最重要項目はPLです

PLはいくらでも(言い過ぎ?)お化粧の余地がありますが、
いくらキャッシュを持っているか?ということはお化粧の余地はありません。
キャッシュは嘘をつきません(二回目)

ただ、残念ながら、
商社のブランド価値形成においてKFSがPLからキャッシュフローに移行するのは
もう少々時間がかかると思います。

というのも、キャッシュフローを最重要項目とする、と決定するには、
株主・潜在的な株主への教育が必要となるからです。
株価はプレイヤーの総意で決まるわけですから、
発信者だけの都合で全てが決められるわけではないのです。
そうすると、発表した時のインパクトを考えるとなかなか動けないわけです。

ゆうこりんがこりん星は港区にあると言った時には、びっくりしましたが、
好意的に受け入れられたと記憶しています。
あれは視聴者の教育ができていたからです。
こりん星そのものを認知させたのちに、
こりん星ってなんなんだよ?という空気を醸成させ、
そこから絶妙なタイミングでの港区宣言。

ゆうこりんの市場との会話テクには脱帽します。

IRの天才

ネオ・コリン星を探して

総合商社の新たなこりん星が、
キャッシュフローである、ということを提案させてもらいましたが、
これでもまだ道半ばです。

というのも、まだ株主・潜在的な株主のみに向けたメッセージが強いから。

株に興味を持たない人も世のなかにはたくさんいます。
(彼らも潜在的な株主かもしれませんが、
株に興味のない人は潜在的な株主ではないとお考えください。)
そんな彼らも一般人の声としてレピュテーションを形成する、

そして、それは間接的に会社のブランドに影響するわけです。

総合商社が生き残るには会社のブランド価値にあり、
株主だけではない、すべての利害関係者へ気をかける必要がある以上
ここの層は将来的には捨てられない、セグメントとなるはず。

そこで私は、キャッシュフローに変わるKFS、つまり、
ネオ・コリン星について考えたい、と思うわけです。

そして、単刀直入に言ってしまえば、
私は「社会貢献」がネオ・コリン星になる、と思います。

KFSの最終形態

シンプルにどれだけ社会貢献したか?
それがブランド価値の形成にもっとも影響を与える時代が来るわけです。

どのように社会貢献を測定するか?というと、

利益の20%を社会貢献に回しますといった「社会貢献性向」を期初に設定し、
それを達成したかどうか、を会社の業績を図る物差しにするわけです。

貢献内容はなんだってOK。
LMVHがノートルダム寺院の修復に寄付した、
例えば、もちろんこれだって社会貢献です。。

https://www.fashionsnap.com/article/2019-04-16/lvmh-donation-notredame/

現在各社は配当をいくら株主に払うか?という配当性向を設定しています。
配当性向の社会貢献版です
(例えばインドには法律で税前利益の2%を寄付活動に当てないといけない、
という法律があります。イメージはそういう感じ。)

ネオ・コリン星の世界、つまり、
社会貢献が最高価値に直結する社会であれば、
株主還元ではなく、社会への貢献こそがブランドの源泉となるわけです。

例えばですが、年間3000億円稼いだ住友商事が、
その20%を株主ではなくて社会貢献に投資すると決めたら、
600億円が社会貢献に回されることになり、
それってそもそも素敵だし、
結果的に企業としてのブランド価値も上がると思いませんか?

既存の株主側から見れば、受取配当が減ったとしても、
社会貢献を通じた株価向上によるキャピタルゲインは望めるでしょうし、
社会貢献をモットーにしている会社へ投資している、
という良い評判を得られるかもしれません。
社会貢献というと反資本主義のような匂いもしますが、
社会貢献は逆説的に資本主義にマッチする概念だと思うのです。
与えよ、さらば与えられん、の世界でしょう。

もちろん、これは将来の社会の話です。
今のPL学園がはびこる日本社会でこれを打ち出しても
市場は評価してくれないと思いますし、
ここまで振り切れる経営者もいないかもしれません。

では、実際それを誰が出来るか?

正直、三菱・三井・伊藤忠あたりにはなかなか厳しい、と思います。

なぜなら、今の状況を変えるメリットがあまりなく、
ゲームを転換するリスクをとれない、と考えるためです。
(粉飾などが発覚し、現在のレースから降りる必要が出てきたら話は別ですが・・)

なので、可能性があるとすれば、丸紅だと思っています。

社長(おそらく)

私が丸紅の社長であれば、ぜひ検討したい。
2018年度の実績で丸紅は
利益は2000億、トップの三菱の1/3、
総資産は6.8兆、こちらも三菱の2/5、
現状五大商社の中では劣ると言わざるを得ないと思います。
しかしながら、世間にインパクトを与えるには
もちろん十分すぎる経済規模を持っています。

この業界5位というポジションでずっと良いのであれば話は別ですが、
利益の稼得というある種の消耗戦から抜け、
社会貢献企業としてブランドを築いていくという戦略を描き
他者と一線を画していく。

マーケティングとは戦わずに勝つことです。

利益を上げることに命をかけていた総合商社が、
名実ともに社会への貢献をその理念に掲げる時代が来る。
その波に早く乗れるか?乗れないか?で、
総合商社の業界地図も変わるのではないか、と思うわけです。

課題への回答まとめ

というわけで、
結論まで来るのにに非常に長くなってしまいましたが課題への回答は下記です。

資本主義の中心にいる商社が追い求めるべきは、逆説的ですが社会貢献の量です。
そして、10年後に生き残るにはPL学園からの早期卒業が大事。

圧倒的な量の社会貢献が総合商社内での競争優位を生み出します。
ゲームを変えるリスクに尻込みしぐずぐずしている他商社を
出し抜き丸紅に舵を取ってもらい、業界地図を一新してほしいところ。


▶︎自分がいるビジネス環境のKey Factor for Successは何か?
→現在のKFSは”PLを創出”すること。
PLの創出を通じた会社のブランド価値の維持・向上によって、各社の地位が保たれています。

▶︎自分がいるビジネスの戦場をどう捉えるか?
→直近では伊藤忠が、非資源・中国というキャッチフレーズを武器にPLを作り
ブランド価値の向上に躍進。まだ、PL主義が受け取り側にも受け入れられている。

▶︎その戦場はどのように変化していくか?
→PLではなく、キャッシュフロー、そして、
最終的には「社会貢献」といったような非財務的な内容
ブランド価値を構成する上で最重要となる時代になると思います。
(社会貢献は非資本主義的ではありません。逆説的ですが超資本主義だと思います。)

▶︎自社の最大の競合会社を選び、上記KFSを用い、有利に進めるにはどうするか?
→丸紅の経営者であり、業界地図を変えようと思うのであれば、
上位商社(三菱・三井など)を出し抜くためにゲームの論理を変えるべく、
「社会貢献」をKFSにした新たな価値観でのビジネスの推進を実行します。
例えば配当性向の全てを株主還元ではなく、社会貢献事業に振り向けます。

以上、長くなってしまいましたが、
とりあえず言いたいことは、ゆうこりんもかなり好き、ということ。

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