読書録

読書録11 『大本営参謀の情報戦記』堀栄三 文春文庫

こちらは前回に続きまた戦争物です。出会ったきっかけは田端大学というオンラインサロンの課題図書だった、というもの。2019年あたり田端大学に参加していたのですが、会社の経理としてシコシコ仕事していると全く出会わないような考え方に遭遇することが多々あり、とても学びのあるサロンでした。
田端さんは口が悪いので、ネット上ではとんでも野郎のように思われておりますが、言っていることはまともだし、常識人だし、本当はとてもいい人ですよ笑

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以下、付箋つけてたところの抜粋。

P34 鉄量を破るものは突撃ではない。ただ一つ、敵の鉄量に勝る鉄量だけである。
P36 検討を要し、その後に最も参考となる”敗戦の教訓”は、ついに一度として陸大の講義には登場しなかったのである。
P39 戦場は実にききかいかいであり、米軍戦車の反転は、明らかに最高指揮官のマッカーサーの意中を示す一つの仕草であったのだ。とかく自分に有利に進展している時には、自分のレンズで相手を見て我田引水の結論を導き出すことが多い。

P51 この二つの取り組みで根本的に違っているのは、ドイツかは徹底した親独から相手を百パーセント信用しているのに対して、ソ連課は嫌ソが基本で相手を全て疑ってかかっていたことである。ソ連課は常に疑っているので、一本の線で一方的に見ないで、他の何かの情報と関連があるかどうかを見つけようとする。

P82 戦場の選定、つまり米軍とどこで戦うかを決めることは、作戦課の最重要な仕事だった。自分の体にあった戦場、すなわち国力、航空力、海軍力という体を考えたら、これに似合う戦場は太平洋だったろうか?
➡︎田端さんが当時口すっぱく、最良のマーケティングとは戦わずして勝つことだ、と言っていたのを思い出します。

P92 情報はまず収集の段階で抗争が起こる。お互いに教えたくない、知られたくない情報を、あらゆる手段を尽くして取ろうとし、取られまいとするのであるから、この抗争が情報戦争である。
P101 陸軍と海軍が双方とも、何の連絡もなく勝手に戦果を発表していたため、陸軍は海軍の発表を鵜呑みにする以外にないという日露戦争以来変わっていない二本立ての日本最高統帥部の組織的欠陥があった。一般国民から見れば・・・・二つの大本営が存在していたのである。
P139 「みんなが読んでくれることが大事ですよ。」これが掛川君の主張で、戦法要覧とか、戦法概要という軍隊臭の題名はボツにした
P148-9 要は制空権が基因で、日本軍の戦局が危急を告げたのが動機であったろうが、日本が、最初から米軍にとっての最大の脅威と感心が補給であることを研究していなかったことも大きな誤認識であったと言えよう。
P158 情報は常に戦略に先行せねばならない。
P164 目前の現実を見据えた線と、過去に累積した知識の線との交差点が職人的勘であって、勘は非近代的な響きだというなら、積み上げた職人の知識が、能力になった結果の判断とでも行ったらいい。
➡︎アートとサイエンスの交叉点ということしょうかね。

P176 堀は言い終わって、実践の渦中に立って、まるで第14方面軍の参謀になって振舞っていたことに気がついた。
➡︎当事者意識を持つ。という点、この点をサロンの発表でも前面に押し出した記憶があります。

P197 飛行機は勝手に飛んでくるのではない。相手の指揮中枢の意思が、この飛行機の行動である以上、マッカーサーの意思のあらわれている徴候である。

P207 「敵情判断で最大の難事は、言い切ることである。しかも情報の判断をするものには、言切らなければならない時期が必ずやってくる」胸を掻き毟るような苛烈な厳しい、情報職人に課せられる運命である。

P233 それにあの人たちの中には赤髪一枚でもう何年も召集されている者もいるのだ。赤紙一枚で戦略の失敗の犠牲になっていった人が何百万といる。


この本はビジネス書の範疇だと思っているのですが、軍事物×ビジネス書は売れそうですよね。
軍事物はそもそも人を惹きつけるコンテンツでありながら、戦略というビジネスとの相性の良さ。なんかこんなうまい切り口から何か発信したいです。


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